ビーイングブーム徹底解析　その1

～週間シングルチャートで見るビーイングブーム～

　ビーイングブームとは、1990年代、特に92年末～93年上半期にかけて、ビーイング系アーティストがヒットチャートの上位を占めた現象を指す。今回は、ビーイングブーム期の週間チャートを分析する。

ビーイング系同士の首位争奪戦

　まず、1992年10月～1993年9月の週間チャートを表にする。(1位～6位まで掲載。)

※画面幅が狭い場合、左右にスクロールできます。 　※1/11は年末のため合算週となっている。

　12/28~7/26の31週のうち、27週にわたってビーイング系アーティスト（赤字）が首位を占めている。 12/28~2/16週は曲は入れ替わっているものの、6週連続でWANDSが首位を独占している。さらに、その後、2/22~3/8にかけて3週連続首位をとった後、年間売上首位のチャゲアスに2週譲ったが、3/29にB'zが首位を取り、そこから7/26まで18週連続で首位をキープし続けた。 18週というと、4か月以上ということでとてつもない記録である。小室哲哉の全盛期でもavexが4か月以上にわたり、首位を維持し続けたことなどあったのだろうか？

　1位を獲得しているのは、すでにブレイクしていたB'zやTUBE、前年にプチブレイクしていたZARDやWANDS、T-BOLANといったアーティストだが、2位以下には、新人のDEENやZYYG、ブレイクしつつあった大黒摩季がランクインするなど、当時のビーイング系の層の分厚さが伺える。

　また、4/26~5/24の5週、6/14~7/12の5週の計10週にわたってトップ3を独占している。 4月~6月はあまりにも新譜の発売が多すぎて、B'z「愛のままに～」やWANDS「愛を語るより～」は、それぞれ4週連続1位を獲得(おまけにWANDSは同時発売のアルバムも4週連続1位)しており、DEEN「このまま君だけを奪い去りたい」やZARD「君がいない」の1位を阻んでいるなど、同門同士での1位の奪い合いがすさまじい。

　さすがに、8月以降は新譜の発売が穏やかになって独占状態は終わり、サザンの「エロティカ・セブン」、ユーミンの「真夏の夜の夢」、井上陽水の「Make-up Shadow」と、なんとも刺激的な夏が幕を開けるのである。(笑)

衝撃の93年6月28日の週間チャート

　6/21~7/5の3週にかけてトップ5の独占しており、6/28はついに1位から6位までビーイング系が独占している。

　6/28のチャートを詳しく見てみると次の表のようになる。

順位	曲名	アーティスト	作詞	作曲	編曲
1位	刹那さを消せやしない/傷だらけを抱きしめて	T-BOLAN	森友嵐士	森友嵐士・五味孝氏	明石昌夫・T-BOLAN
2位	裸足の女神	B'z	稲葉浩志	松本孝弘	明石昌夫・松本孝弘
3位	揺れる想い	ZARD	坂井泉水	織田哲郎	明石昌夫
4位	果てしない夢を	ZZYG, REV, ZARD & WANDS featuring 長嶋茂雄	上杉昇・坂井泉水	出口雅之	明石昌夫
5位	君が欲しくてたまらない	ZYYG	上杉昇	織田哲郎	栗林誠一郎
6位	夏を待ちきれなくて	TUBE	前田亘輝	春畑道哉	TUBE

　意外と葉山たけしの文字はなく、作曲の欄に栗林誠一郎の文字もない。 葉山たけしはこの週の前後で、「すれ違いの純情」や「このまま君だけを奪い去りたい」、「翼を広げて」などをヒットさせている上、「負けないで」や「世界中の誰よりきっと」といったメガヒット作品も手掛けているので、別にこの頃存在感がなかったわけではなかった。しかし、この時期は明石昌夫にとっての全盛期であるため、明石昌夫が強すぎたという言い方が正しいであろう。

　一方で、編曲の欄に栗林誠一郎の文字が珍しく見られるほか、なんと！明石昌夫が1人で4冠を達成している。ビーイングは、数人の作曲家・編曲家によってヒット曲が生み出されていたという側面は大きかったものの、この週を見る限り、いろいろな名前が並んでおり、必ずしも作家だけでブームを作り出していたわけではないことが分かった。 いかに才能のある若者たちがビーイングに集まっていたかの証左であろう。

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