ビーイングブーム徹底解析 その6
~ビーイングブームへの流れまとめ~
今回はビーイングブーム徹底解析の第6弾として、その2からその5までのまとめも兼ねて、1989年から1993年までのビーイングの歩んだ軌跡をまとめる。
各年の詳しい解析は以下の記事を参照。
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3. ビーイングブーム徹底解析その2 ~ビーイングブーム前夜(90年)~
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4. ビーイングブーム徹底解析その3 ~ビーイングブーム前夜(91年)~
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5. ビーイングブーム徹底解析その4 ~ビーイングブーム前夜(92年)~
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6. ビーイングブーム徹底解析その5 ~ビーイングブーム(93年)~
年間トップ100ランクイン状況の推移
ビーイング系アーティストの年間トップ100占有率と年間トップ100圏内作品の総売上の推移を次のグラフに示す。※TOP100占有率(折れ線)は左軸、TOP100圏内総売上(縦棒)は右軸
まず、ビーイング系アーティストによるトップ100圏内作品の総売上(右軸、縦棒)の推移を見てみる。大まかな傾向としては、シングルは指数関数的(青細線)に、アルバムは線形的(赤細線)に増加していることが読み取れる。
次に、ビーイング系アーティストによる年間トップ100占有率(左軸、折れ線)は、シングルでは、89年から93年にかけて、0→6→9→17→26、アルバムでは、1→7→8→17→17と推移した。おおざっぱな傾向としては、比較的、線形的に変化しているのが分かり、92年まではシングルとアルバムがほぼ同じような軌跡をたどって増加していったことは注目に値する。もう少し細かく見ると、90年から91年にかけての伸びだけが小さいことも分かる。
前年までの勢いそのままに増加したシングルとは対照的に、アルバムは92→93年で横ばいであった。これは、ビーイングブーム下でのデビュー勢が、シングルはリリースできても、アルバムを出すまでには至らなかったため、それから、B'zと違いブレイク組の旧譜作品のランクイン数が少なかったためと考えられる。
シングルとアルバムの増え方にはなぜ差異があるのか?
シングルとアルバムの増え方にはなぜ差異があるのか?それを解明するために、上図の縦棒(ビーイング系アーティストによるトップ100圏内作品の総売上)を1作あたりの売上とランクイン数に分解して解析してみる。次の図は、1作あたりの売上(縦棒、右軸)とTOP100ランクイン数(折れ線、左軸)の”前年に対する増加”を表している。(負の場合は減少)
シングルの1作あたりの売上(黄色縦棒)は91年に伸び悩んでいるが、特に90,93年には大きく伸びている。一方、シングルのランクイン数(青線)は、91年に伸びがやや鈍化しているものの、それ以外の年では6作以上の伸びを維持している。その結果、1作あたりの売上が伸びた年には総売上が特に大きな伸びを記録している。
アルバムはシングルに比べて伸び方が不安定で、91年以外はシングルに比べて1作あたりの売上(緑棒)の伸びがそこまで大きくなく、92年に至っては前年比でマイナス(減少)であった。TOP100ランクイン数(赤線)も上下が激しく、91,93年はほぼ増加していないが、90,92年は大きく増加している。
その結果、一方が下がった年には、もう一方が上昇することによって、全体の売上としては増加しているが、その伸びは比較的緩やかになっている。これは、旧譜作品のランクインや新人のランクインが増えると1作あたりの売上が減少し、逆に旧譜作品や新人のランクインが減ると1作あたりの売上が増加するためだと考えられる。
したがって、シングルは指数関数的な推移を記録したが、アルバムは線形的な推移にとどまった。
ビーイングの勢いは本物か
ここで鋭い方は、「確かにビーイング系のセールスは増えたことは間違いない。しかし、CDバブルに突入して、業界全体のセールスが上昇したのに伴いビーイング系の売上も増えたのに過ぎないのではないか」と思うかもしれない。そこで、日本の全体のCDの生産数に対する「年間TOP100圏内のビーイング系作品の累計売上の比」及び、「ビーイング系作品の1作あたりの売上の比」の推移をグラフにまとめた。もしCDバブルに伴って増えただけなら、同じ比率で推移するはずである。
※TOP100圏内総売上(縦棒)は右軸、1作あたりの売上(折れ線)は左軸
累計セールス(棒グラフ)はCD生産数の増加よりもはるかに大きく上昇しており、伸びゆく音楽業界の中でもビーイングが特段成長していたことが分かった。特にシングル(青棒)の伸び方はすさまじい。一方アルバムは比較的穏やかな伸び方を示している。それでも、業界全体の伸び以上の成長を見せている。
一方、1作あたりの売上(折れ線グラフ)は、シングルでは89→90年にかけて、アルバムでは90→91年にかけて大きくその比率が伸びているが、その他の年はほぼ同程度の水準で推移している。よって、業界全体よりも伸びた年は1年に過ぎず、ビーイング系の1作あたりの売上の増加速度はCDの生産数の増加速度とそれほど変わらなかったと言える。
年間トータルセールスランキングの推移
最後に、年間トータルセールスランキングTOP10の推移を表にする。年 | アーティスト名 | ランクイン数 | ||||
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90 | B'z(3位) | 1組 | ||||
91 | B'z(1位) | 1組 | ||||
92 | B'z(3位) | 1組 | ||||
93 | ZARD (1位) |
WANDS (2位) |
B'z (4位) |
T-BOLAN (5位) |
TUBE (10位) |
5組 |
92年まではB'zが唯一トップ10にランクインし続けており、この頃はセールス的にはB'zしかブレイクしていなかった。しかし、迎えた93年。なんとトップ10に5組もランクイン!ビーイングブームを象徴するランキングと言えよう。
次回からは、「作家で見るビーイングブーム」をお送りする。その第1弾として93年の織田哲郎を特集する。
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