ビーイング系ミリオンヒットアルバム特集

 今回はビーイング系アーティストのアルバムミリオンランキングをお届けする。

全ミリオンアルバム一覧

 まず、ビーイング系のミリオンヒットを記録したアルバムのビーイング系内での順位、アーティスト、アルバム名、形態、発売年月日、初動枚数、最高順位、登場週数、売上枚数を表にまとめてみた。

※画面幅が狭い場合、左右にスクロールできます。

順位 アーティスト名 アルバム名 枚数(万) 形態 発売年月日 初動枚数(万) 最高順位 登場週数
1 B'z B'z The Best “Pleasure” 513.6 ベスト 98/5/20 271.0 1 64
2 B'z B'z The Best “Treasure” 443.9 ベスト 98/9/20 250.0 1 40
3 倉木麻衣 delicious way 353.0 オリジナル 00/6/28 221.9 1 36
4 ZARD ZARD BEST The Single Collection ~軌跡~ 303.4 ベスト 99/5/28 130.7 1 45
5 B'z LOOSE 300.3 オリジナル 95/11/22 133.6 1 32
6 大黒摩季 BACK BEATs #1 286.8 ベスト 95/12/11 102.9 1 53
7 B'z IN THE LIFE 240.3 オリジナル 91/11/27 104.3 1 98
8 ZARD 揺れる想い 223.9 オリジナル 93/7/10 57.1 1 56
9 B'z RUN 219.7 オリジナル 92/10/28 119.0 1 53
10 ZARD ZARD BLEND ~SUN & STONE~ 200.5 ベスト 97/4/23 66.7 1 54
11 ZARD OH MY LOVE 200.2 オリジナル 94/6/4 58.0 1 75
12 ZARD forever you 177.4 オリジナル 95/3/10 62.0 1 35
13 大黒摩季 POWER OF DREAMS 175.5 オリジナル 97/8/6 81.3 1 16
14 B'z MARS 173.5 ミニ 91/5/29 66.4 1 81
15 B'z SERVIVE 172.3 オリジナル 97/11/19 104.0 1 24
16 B'z The Ballads 〜Love & B'z〜 171.3 ベスト 02/12/11 105.0 1 25
17 B'z RISKY 169.7 オリジナル 90/11/7 31.5 1 130
18 ZARD TODAY IS ANOTHER DAY 165.5 オリジナル 96/7/8 77.4 1 40
19 B'z The 7th Blues 163.0 オリジナル 94/3/2 105.0 1 16
20 WANDS 時の扉 162.6 オリジナル 93/4/17 41.1 1 33
21 大黒摩季 LA.LA.LA 161.8 オリジナル 95/7/19 56.5 1 18
22 大黒摩季 永遠の夢に向かって 158.3 オリジナル 94/11/9 55.0 1 41
23 B'z B'z The “Mixture” 150.0 ベスト 00/2/23 110.1 1 15
24 ZARD ZARD BEST ~Request Memorial~ 149.7 ベスト 99/9/15 90.2 1 27
25 B'z FRIENDS Ⅱ 146.7 ミニ 96/11/25 96.6 1 17
26 DEEN DEEN 143.9 オリジナル 94/9/14 46.4 1 23
27 B'z Brotherhood 139.2 オリジナル 99/7/14 101.9 1 14
28 B'z FRIENDS 135.6 ミニ 92/12/9 70.7 1 30
29 倉木麻衣 Perfect Crime 132.0 オリジナル 01/7/4 80.0 1 17
30 T-BOLAN SINGLES 121.4 ベスト 96/8/8 23.4 1 23
31 B'z B'z The Best “Pleasure Ⅱ” 119.2 ベスト 05/11/30 76.2 1 32
32 B'z BAD COMMUNICATION 118.2 ミニ 89/10/21 0.9 12 163
33 ZARD 永遠 115.0 オリジナル 99/2/17 61.3 1 17
34 B'z ELEVEN 113.2 オリジナル 00/12/6 75.7 1 12
35 B'z GREEN 112.6 オリジナル 02/7/3 80.0 1 16
36 B'z WICKED BEAT 111.1 ミニ 90/6/21 10.1 3 120
37 TUBE TUBEst Ⅱ 110.2 ベスト 96/4/1 33.4 3 31
38 ZARD HOLD ME 106.5 オリジナル 92/9/2 8.6 2 71
39 TUBE 終わらない夏に 101.5 オリジナル 94/6/18 44.8 1 17


解説

500万~


 日本歴代2位の記録をもつB'zの金盤が513万枚余りの売上で第1位となった。初動売上も270万枚余りでビーイング内第1位を記録している。
 B'zの場合、コンセプトに合わなければ、容赦なく大ヒットしたシングルでもオリジナルアルバムから外すため、オリジナルアルバムへ未収録のシングルも多く、他のアーティストよりもベストアルバムの意義が大きかった。本アルバムでアルバム初収録となったのは、「love me, I love you」「Easy Come, Easy Go!」「ALONE」「裸足の女神」「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない」「LADY NAVIGATION」「太陽のKomachi Angel」「BE THERE」「さまよえる蒼い弾丸」の計9曲という多さである。 さらに、B'zの破格のアーティストパワーも相まった結果、500万枚という驚異のセールス記録を叩き出すことになったのだ。元々は1枚のベスト盤を出す予定だったが、あまりにも人気曲が多いため2枚に分けることになった。そのため、2枚目の価値を上げるためか収録曲は売上の高い順とはなっておらず、初期の「BE THERE」や「太陽のKomachi Angel」といった楽曲も収録されている。


400万~500万


 98年5月発売の金盤の兄弟盤として4か月後にリリースされたB'zの銀盤が日本歴代5位の443万枚余りの売上で第2位となった。「B'z The Best “Treasure”」には金盤に収録されていたハガキで実施されたアンケートの上位14曲が収録された。 投票で第2位にランクインして収録された「BLOWIN'」はB'zのシングルで3番目に高い売上を誇るものの金盤からは外された。これには当時のファンが驚きをもって受け止めただけでなく、リリースから20年以上経った後のYouTube動画にてアレンジャーの明石昌夫氏も「信じらんない」と非常に驚いていた。
 なお、本作は年間1位を獲得できなかったアルバムとしては最高の売上を記録したという記録を持っている。また、B'zが1998年に記録したセールス記録(金額ベース)は現在でも歴代1位である。金盤・銀盤のリリースの契機となったB'zのベスト盤問題に関しては、他の記事でまとめている。

B'zのベスト盤の発売契機に関する記事はこちら↓ 2. B'zにとって最大の問題作!?Flash Back -B'z Early Special Titles-


300万~400万

 いわゆるトリプルミリオンを記録したアルバムはB'z、ZARD、倉木麻衣の計3作。


 B'zの銀盤に続いて栄えある第3位にランクインしたのが、353.0万枚を売り上げた倉木麻衣の1stアルバム「delicious way」である。90年代後半から2000年代初頭までは、アルバムバブルが起こり、シングルのミリオンヒットは減少傾向にあったものの、売上上位層のアルバムの売上枚数はかつてないほどに増加していた。それが顕著に現れるのが、”大型新人の1stアルバム”である。1st~3rdまでのシングルで大ヒットを記録したアーティストの1stアルバムがミリオンヒットを記録した例は、90年代前半ではDEENくらいしかおらず、シングルは売れてもアルバムは売れない例も多かった(ビーイングでは大黒摩季・B.B.クィーンズなど)。 翻って、90年代後半は、デビューから瞬く間にシングルヒットを飛ばしたglobeやMy Little Lover、PUFFY、宇多田ヒカルといった大型新人たちの1stアルバムのメガヒットが目立った。相川七瀬にいたっては、シングルが30~40万枚の売上にとどまっていたにも関わらず、1stアルバム「RED」はダブルミリオンを記録するなどした。この流れの最後発組の1人が倉木麻衣だったのである。1stシングルがミリオン、2nd・3rdシングルもミリオンに迫る売上を記録して、世間の期待が高まる中での1stアルバムのリリースとなった。そんな本作の初動売上221.9万枚は1stアルバムとしては歴代1位の記録である。



 4位には99年リリースのZARDのベストアルバム「The Single Collection ~軌跡~」が303.4万枚でランクイン。B'zのベスト盤の成功を受けてB'zのベスト盤の翌年にリリースされた。いわば、B'zの金盤の”姉妹盤”とも言える存在で、1次から3次までの特典があったこと、100枚だけ直筆のサインが書かれていること、第二弾のベスト盤の収録曲を決めるアンケートハガキが入っていたことなどかなり共通点が多い。99年頃のZARDは、シングルの売上が20万枚程度にまで低下していたが、大規模なプロモーションとベスト盤ブームが売上を押し上げた結果、300万枚を超えるセールスを叩き出し、ZARDの存在感を久しぶりに見せつけた。
 ちなみに、このベストアルバムに封入されたハガキは、豪華客船「パシフィックビーナス号」で行われたZARDの初ライブへの参加応募ハガキとなっていた。応募総数約100万枚のうち幸運の600人が当選、倍率は1700倍にもなるすさまじい競争率のシークレットライブ(当選者以外には日時・場所が公開されない)となった。



 5位にはB'zの8枚目のオリジナルアルバム「LOOSE」が300.3万枚でランクイン。オリジナルアルバムで大黒摩季のベスト盤を越え、ZARDのベスト盤に匹敵するというのだから、B'zの売上がいかに破格なのかが分かる。B'zの最高傑作と名高い「LOVE PHANTOM」が収録された点、前年の暗かったブルースへの回帰から1周まわって明るい曲が増え、新規リスナーの獲得に成功した点、先行シングルと本アルバム発売にあたりMステにも2度出演するなどプロモーション活動を行った点など、売上を押し上げる要因が重なった結果、トリプルミリオンを記録した。
 シングルの売上はビーイングブームの起こった1993年をピークとして、下降線に入っていたので、94年に出した7枚目のオリジナルアルバムが王道のアルバムになっていたら、そちらのほうが売上としては高かったかもしれない。しかし、ブルース色を全面に出した上に2枚組という異色のオリジナルアルバムを全盛期にリリースしてしまうあたりが感心させられるし、なによりB'zの音楽性の広さと息の長さにつながっているように思われる。明石昌夫が抜けてから、つまり、B+U+Mの解散以降で初めてのアルバムでもあり、かなり現在のB'zに通じる部分も多くなりつつある時期の作品と言えよう。


200万~300万

 いわゆるダブルミリオンのアルバムはZARDが3作、B'zが2作、大黒摩季が1作の計6作。やはりビーイングの中でもB'z・ZARDの売上は破格である。(もちろんB'zがぶっちぎりで多いのだが…)


 6位には、95年リリースの大黒摩季のベストアルバム「BACK BEATs #1」が286.8万枚でランクイン。サウンド的には、翌96年の「熱くなれ」でいったん打ち込み主体のサウンドが終わりを迎え、それ以降は一般的なバンドサウンドになっていくので、後追いで聴くと、なぜこのタイミングでベスト盤を出したのか不思議に感じる。「熱くなれ」がサウンド的に浮いてしまうために、97年の5thオリジナルアルバム「POWER OF DREAMS」ではアルバムバージョンにとしての収録となっているのだろう。ベスト盤ブーム(97~01年)よりもかなり早いタイミングでリリースされているものの、女性ボーカルのベスト盤としては、安室奈美恵やglobe、ドリカム、ELTなどを抑え、浜崎あゆみ・松任谷由実・竹内まりや・ZARDに次ぐ第5位にランクインしている。



 7位にはB'zの5枚目のオリジナルアルバム「IN THE LIFE」が240.3万枚でランクイン。先行シングルでもミリオンという考えられない次元のセールスを記録した(ALONE, ZERO, Don't Leave Me, LOVE PHANTOMの計4作)初めてのアルバムでもある。初めて初動でミリオンを突破した作品であり、91/11/25付の週間チャートででドリカムの「MILLION KISSES」が85.5万枚、その翌週(12/2付)でユーミンの「DAWN PURPLE」が101.4万枚、そしてさらにその翌週(12/9付)でB'zの「IN THE LIFE」が104.3万枚で、それぞれ初登場1位と、非常にハイレベルな首位争いが起こった作品として印象深い。
 明石昌夫による打ち込みが多用されたポップなB'zの集大成とも言えるアルバムである。そのため、後年には他のビーイング系アーティストとはその音楽性において一線を画すB'zだが、この頃はビーイング系らしいメロディー・サウンドなので、個人的にはB'zを聴き始めるならこのアルバムが最も聴きやすいと思う。



 8位にはZARDの4枚目のオリジナルアルバム「揺れる想い」が223.9万枚でランクイン。「負けないで」「揺れる想い」という2作のミリオンヒットヒット曲を収録し、売れることが約束されたアルバム。93年の7月の発売で約半年の累計売上は190万枚にのぼり、93年の年間アルバムセールスでトップに輝いた。さらに94年に入ってからも売れ続け約30万枚を売り上げ、94年の年間チャートにも53位にランクインしている。
 シングルが強力な上、アルバム曲も爽やかさが非常に出ており、ZARDの爽やかさを最も感じられるアルバムとなっている。ZARDのオリアルで最初に聴くのを奨めるならこの作品だろう。期待通りのZARDサウンドを楽しめる。収録シングル2作がミリオンヒットを記録しているので、もっと売れていても不思議ではない気もするが、(90年代後半に比べて)アルバムがそれほど売れていなかった93年で年間1位を獲得してダブルミリオンを記録しているので、妥当な売れ方と言えるだろう。
 ちなみに、ランキング表を見てもらうと気づくのだが、上位19位の中でアルバムタイトルが日本語なのは本作のみである。(「時の扉」が20位にランクイン)



 9位にはB'zの6枚目のオリジナルアルバム「RUN」が219.7万枚でランクイン。明石昌夫が「RISKY」でロックに振って、次の「IN THE LIFE」でポップに振ったから「RUN」ではもう一回ロックに振ったと証言しているように、キャッチーだった前作の「IN THE LIFE」に比べてハードさが増したため、初動枚数は15万枚ほど増加したものの、累計売上は20万枚程度減少した。ハードさが増したと言っても、後追いで聴くとビーイング系らしい明石昌夫によるアレンジで聴きやすい。それでもリアルタイムで聴いていたファンにとっては前作に比べて結構な変化に感じたのかもしれないと想像するのは難くない。
 もともと先行シングルと同じ「ZERO」というタイトルで発売される予定だったが、アルバム収録曲の「RUN」がアルバムタイトルとなった。個人的には、先行シングルと同一のタイトルにするよりも、アルバム曲のタイトルをアルバム名にする方が、そのアルバムのコンセプトがより前面に押し出されるので好みだ。



 10位にはZARDの初のベストアルバム「ZARD BLEND ~SUN & STONE~」が200.5万枚でランクイン。発売された1997年当時は公式に”サマーベスト”と謡われていたが、現在は2年後の「ZARD BEST The Single Collection ~軌跡~」が初の公式ベスト盤ということになっており、本作は”コンセプトアルバム”ということにいつの間にか修正されている。本作はB'zの非公式ベスト盤「Flash Back -B'z Early Special Titles-」のリリースを契機としてリリースされた”ワケあり”のアルバムである。サマーベストと謡いながらも、やや中途半端な選曲となっており、ダブルミリオンを記録したものの、あまり意味のあるアルバムではない。

本作に関する詳しい記事はこちら↓ 3. 妄想アルバム ZARD BLEND ~SUN&STONE~



 11位にはZARDの5枚目のオリジナルアルバム「OH MY LOVE」が200.2万枚でランクイン。ZARDのアルバムでは最長の75週にわたり100位以内にランクインした。最終週にギリギリ200万枚を突破したことは有名である。前作「揺れる想い」に引き続き、初動売上は60万枚弱だが、じわじわと売上を伸ばし、半年で161.9万枚を売り上げ、94年の年間ランキングでは第5位にランクインしているだけでなく、翌95年にも約38.3万枚を売り上げ、年間58位にランクインしている。このように、売上のピークを迎えてからもロングヒットを記録しているのが、ZARDの特徴でもある。
 前作の「揺れる想い」が爽やかさを突き詰めたアルバムであったのに対し、本作は10作中7作を栗林誠一郎による曲が占めることからも分かるように、哀愁がある聴き応えのあるアルバムとなっている。ZARDのオリジナルアルバムとしては、「HOLD ME」と人気を二分する名盤と言えるのではないだろうか。完成度が非常に高く、筆者にとっては最も好きなアルバムである。


100万~200万

 100万枚代の売上を誇るアルバムは計28作品も存在する。ビーイング恐るべしである。なぜか160~180万枚の売上のアルバムが特に多い。全て詳しく解説すると冗長なので、特筆すべきことがある場合のみ詳しく解説していく。と思って書き始めたが、書き終えてみると意外と詳しく書いてしまった…。


 12位にはZARDの6枚目のオリジナルアルバム「forever you」が177.4万枚でランクイン。最長のロングヒットを記録した前作に比べて、登場週数が半分以下の35週まで大幅に下落した。この頃から始まったアルバムバブルの余波を受けたものと考えられる。 前々作、前作とは少し異なる趣のコンセプトになっており、詞は私小説的で、アレンジもオケヒの乱用などの派手な装飾を減らしオーガニックな雰囲気となっている。「これはこれで良いなぁ」と思える安定期の1枚という感じで、完成度も高い。



 13位には大黒摩季の6枚目のオリジナルアルバム「POWER OF DREAMS」が175.5万枚でランクイン。92年のデビュー以来、マスコミへの露出を一切行ってこなった大黒摩季だが、95年のベスト盤以降、シングルの売上は下降線の一途をたどっていた。そこで、テコ入れの一環として、ライブとテレビ番組への出演をついに解禁することとなった。 1997/8/1に「LIVE NATURE #0」と題された初ライブを有明の野外ステージで行い、なんとその一部がMステで放送されるという話題性抜群のプロモーションを行ったのだ。その結果、直後の8/6にリリースされた6枚目のオリジナルアルバム「POWER OF DREAMS」はオリアルとしては自身最高の初動81.3万枚、総売上も自身最高の175.5万枚を叩き出した。4週連続1位を獲得したものの、登場週数自体は16週と話題性だけが先行してすぐに売り切ってしまった感が否めない。また、話題性を集めたことで、前々年発売のベスト盤がチャートを急浮上するという現象が生じた。



 14位にはB'zの3枚目のミニアルバム「MARS」が173.5万枚でランクイン。後に累計で初のミリオンヒットとなる「LADY NAVIGATION」のヒット中にリリースされた。実はセルフカバー曲である「孤独のRunaway」が収録されており、これが有名なので、実質的にこの曲がA面で他の4曲がカップリングの少し曲数が多めのシングルという感覚だったのではないだろうか。ブレイク期に発売されたため、登場週数が非常に長く、81週もランクインしている。また、91年時点で既に初動で60万枚を売り上げるだけのアーティストパワーを有していたことには驚くほかない。



 15位にはB'zの9枚目のオリジナルフルアルバム「SERVIVE」が172.3万枚でランクイン。シングルのミリオン連続記録が途切れたとはいえ、前作は300万枚売れたくらいなので、せめてダブルミリオンには到達しそうなものなのだが、意外にも170万枚程度にとどまった。この頃になると、そのハードな音楽性が故に、固定ファン以外のリスナーの比率が減ってきていたと思われ、ロングヒットが望めなくなりつつあった。(本作の登場週数は24週)



 16位にはB'z初のバラードベスト「The Ballads 〜Love & B'z〜」が171.3万枚でランクイン。いくらベスト盤とはいえ、2002年時点で初動ミリオンには開いた口が塞がらない。B'zにしては珍しく白を基調としたジャケットが印象的。



 17位にはB'zの4枚目のオリジナルフルアルバム「RISKY」がランクイン。初動31万枚余りながらも、驚異の登場週数130週を記録し、累計では170万枚近くに達した。130週というと、およそ丸3年であり、最終チャートインがなんと!94年の1月である(おいおい…ドンリブの直前じゃねぇかよ笑)。



 18位にはZARDの7枚目のオリジナルアルバム「TODAY IS ANOTHER DAY」が165.5万枚でランクイン。オリアルとしては自身最高の初動77.4万枚を叩き出したものの、最終的な売上は前作を10万枚余り下回った。ただ、登場週数は40週と前作の35週からやや持ち直した。本作よりセルフプロデュースへ移行した上、アルバム曲が3曲のみと半ベスト状態になるなど、今までと少し異なる内容のアルバムとなっている。90年代の頃からのコアなファンの中では、ZARDのオリアルは「forever you」までという声も少なくないようだ。



 19位にはB'zの7枚目のオリジナルフルアルバム「The 7th Blues」が163.0万枚でランクイン。先述の通り、ブルース色を前面に出した2枚組の超大作である。2枚組のオリジナルアルバムとしては日本歴代1位の売上を誇る。94年の年間ランキングでは、累計では40万枚近くの差をつけられることになるZARDの「OH MY LOVE」を約1.5万枚の差で抑え、年間4位にランクインしている。
 明石昌夫によると、松本孝弘は最後まで「本当に2枚組にして大丈夫かな」と2枚組として発売することに対して悩んでいたとのこと。また、どちらの方が売れたと比べられるのを松本孝弘が嫌がったため、2作同時発売ではなく、2枚組としてリリースすることにしたとも語っている。



 20位にはWANDSの2枚目のオリジナルアルバムにして最大のヒット作「時の扉」が162.6万枚でランクイン。ビーイングブーム時は時代の寵児となったWANDSだが、意外にもミリオンを記録したアルバムは本作のみである。本作は93年の年間ランキングにおいてZARD「揺れる想い」に次ぐ第2位にランクインしている。
 5作のミリオンヒットシングル(中山美穂とのコラボシングルを含む)を持ちながら、アルバムではミリオンヒット作を1作しかもたないアーティストはかなり珍しい(もしかしたら唯一かもしれない)。シングルは爆発的に売れるが、オリジナルアルバムはそこまで売れないという特徴はアイドルに多く、SMAPやKinKi Kids、Wink、モーニング娘。などが典型的な例として挙げられる。ルックスを売りにしていた福山雅治なんかも同様で、アルバムのミリオンはベスト盤のみである。WANDSの作品の中で最高売上のアルバムがオリアルであることは、アイドル的な売れ方をしつつも、やはりある程度のアーティスト性を有していたことの証とも言えるだろう。



 21位には大黒摩季の5枚目のオリジナルアルバム「LA.LA.LA」が161.8万枚でランクイン。10枚目シングル「ら・ら・ら」が自身2度目の初登場首位と自身3度目のミリオンヒットを記録した勢いそのままにリリースされた本作は、前作「永遠の夢に向かって」からわずか8ヵ月のインターバルでリリースされたものの、前作をわずかに上回る初動・累計売上を記録した。しかしながら、登場週数は18週と非常に少ない。94年の年末から95年の年末のわずか1年の間に、フルアルバム2枚、ベスト盤1枚をリリースするという、このリリースラッシュが大黒摩季の96年以降の売上の低下につながっているのではないかと思われる。



 22位には大黒摩季の4枚目のオリジナルアルバム「永遠の夢に向かって」が158.3万枚でランクイン。これまではアルバムでのミリオンヒットはなかったが、先行シングル「永遠の夢に向かって」が自身初の初登場首位を記録した中でリリースされた。収録シングルは「あなただけ見つめてる」(123.6万枚)、「白いGradation」(48.5万枚)、「夏が来る」(97.1万枚)、「永遠の夢に向かって」(79.4万枚)とヒット曲が4曲も収録されており、その合計売上枚数はなんと348.6万枚に達する。その勢いのままに100万枚を突破したものの、その割には160万枚という数字は少し少ないように感じる。大黒摩季はシングルの初動が低いことからも分かるように、固定ファンの獲得には苦戦していたと言わざるを得ない。本作は次作「LA.LA.LA」とは異なり、約1年に相当する41週にわたってランクインしている。



 23位にはB'zのマストアルバム「B'z The “Mixture”」(プラチナ盤)が150.0万枚でランクイン。”ベスト盤”ではなく、”マスト盤”として売り出された本作。初期の作品をリアレンジ・リミックスすることで、00年時点でのB'zのサウンドに近づけたリメイク作品となっている。最初期の作品に関しては明らかにこちらの方がカッコイイ。発売経緯に関しては、別の記事を参照していただきたい。

B'z The “Mixture”の発売経緯に関してはこちら↓ 2. B'zにとって最大の問題作!?Flash Back -B'z Early Special Titles-



 24位にはZARDのベストアルバム第2弾の「ZARD BEST ~Request Memorial~」が149.7万枚でランクイン。B'zの銀盤は金盤の85%くらいの売上を記録したことを考えれば、アルバム曲が多いとは言え「軌跡」の約50%の150万枚という結果に終わったことには、ZARD自身がかなり地力を落としていたことが伺える。



 25位にはB'zの5枚目のミニアルバム「FREINDS Ⅱ」が146.7万枚でランクイン。前作「FRIENDS」を10万枚余り上回った。2021年に「FRIENDS Ⅲ」がリリースされるまでは約25年の間、自身最後のミニアルバムとなっていた。89~92年はフルアルバム1作に加えてミニアルバム1作もリリースするという形であったが、本作は96年に発売された唯一のアルバムとなっており、唯一ミニアルバムの宣伝のためだけにMステに出演している作品である。



 26位にはDEENの1枚目のアルバム「DEEN」が143.9万枚でランクイン。これによりDEENは邦楽史上初の1stシングル・1stアルバム共にミリオンヒットという快挙を成し遂げた。
 収録したシングルがいずれも大ヒット曲(「DA・KA・RA」105万枚、「チョット」84.0万枚)であった大黒摩季の2ndアルバム「DA・DA・DA」が約75万枚で終わったのを反省してか、DEENはなかなかアルバムのリリースに踏み切らず、デビューからおよそ1年半、シングルを5枚リリースしてからの1stアルバムのリリースとなった。収録シングル4枚のうち、「このまま君だけを奪い去りたい」「瞳そらさないで」がミリオンヒットを記録しており、売れないわけがない状態まで待ってからのリリースとなった。
 加えて、ボーカルの池森が自身の志向する音楽性とプロデューサーの指示する音楽性との差異に苦しんでいたとも思われる。そのすり合わせに時間を要したとも考えられなくもない。また、度重なるメンバーチェンジの影響も無視できない。



 27位にはB'zの10枚目のオリジナルフルアルバム「Brotherhood」が139.2万枚でランクイン。登場週数は次作「ELEVEN」に次いで2番目に少ない14週となっている。本作でもB'zから離れなかった人は2000年代のB'zにもついてこられたのではないだろうか。しかし、B'zは人気に甘んじることなく、ファンに踏み絵を踏ませて、振り落とすようなことをするからすごいよなぁと筆者はつくづく思う。



 28位にはB'zの4枚目のミニアルバム「FRIENDS」が135.6万枚でランクイン。前年のミニアルバム「MARS」(173.5万枚)を大きく下回ったのは、6thフルアルバム「RUN」がりリースされた直後で、リスナーがB'zに食傷気味であったことも関係していると思われる。今では知名度抜群の「いつかのメリークリスマス」が収録されているため、もっと売れていてもおかしくないような感覚になるが、当時から絶対的な人気を誇っていたわけではないところが面白い。



 29位には倉木麻衣の2枚目のオリジナルアルバム「Perfect Crime」が132.0万枚でランクイン。初動80万枚のわりには累計が伸びなかった。まだ2枚目のオリアルにも関わらず、ライトファンへの訴求力が落ち、コアなファンしか買っていないため、ロングヒットが望めない状態になっていたと推察される。登場週数17週はB'zの「GREEN」やZARDの「永遠」と同水準なことから、デビューからの年月の浅さでその異質ぶりが目立つ。



 30位にはT-BOLAN初のベストアルバム「SINGLES」が121.4万枚でランクイン。93年の5thオリジナルアルバム「LOOZ」以降、3年近くオリアルが出ていないという状態(シングルは毎年2枚しっかり出ていた)でリリースされたベスト盤。ベスト盤をリリースしたかったというよりは、森友の声が出ないがためにレコーディングがストップしていたので、時間稼ぎのために、ひとまずベスト盤を出したというのが実情だろう。
 初動23.4万枚で初登場2位、翌週も2位だったが、3週目・4週目に1位を獲得し、計2週首位を獲得している。96年の6月下旬~7月末は超ハイレベルな首位争いが繰り広げられていたので、もし1ヵ月早くリリースされていたら首位は取れなかっただろう。結局、T-BOLANにとって唯一のミリオンヒットを記録したアルバムとなった。ベスト盤は売れるとはいえ、この時期のベスト盤がミリオンで、全盛期の4thオリジナルアルバム「HEART OF STONE」がミリオン未到達であることは不思議でしょうがない。



 31位にはB'zが2005年にリリースしたベストアルバム「B'z The Best “Pleasure Ⅱ”」が119.2万枚でランクイン。ビーイング系のミリオンヒットを記録したアルバムとしては最も新しい。39thシングル「OCEAN」が大ヒットした直後の発売ということも相まったのだろうが、そうはいっても、05年時点で初動76.2万枚、累計119.2万枚はそう簡単に為せることではない。このベスト盤に関しては発売のタイミングと経緯がよくわからないことから、「OCEAN」の大ヒットを受けて、事務所サイドが売上確保のためにリリースに踏み切ったのではないかとの憶測もある。



 32位にはB'zの1stミニアルバム「BAD COMMUNICATION」が118.2万枚でランクイン。B'zのブレイク作にして、最長のロングヒット作である。初登場15位、初動枚数はわずか8600枚というスタートから、93年の9月まで丸4年(計163週)かけて売れ続け、ついにはミリオンも突破してしまった。ベスト盤でもなかなか163週というのは見かけないが、ミニアルバムで記録しているというのが驚異的であるし、なにより長い時間をかけてコツコツファンを獲得していった証といえよう。
 音楽性的にも、”売れるように作る”のではなく”やりたいことをやった上で売れるように作る”ということをしないと売れないのだと気付かされたと明石昌夫が証言しているように、本作を機に、ビーイング系らしいギターの主張の強いアレンジに変わっていく。



 33位にはZARDの8枚目のオリジナルアルバム「永遠」が115.0万枚でランクイン。オリアルとしては最後のミリオン突破作品となった。シングルは20~30万枚程度まで売上が落ちていたので、むしろよくミリオンまで引っ張ったなという印象である。坂井泉水がCDTVのアルバム紹介に動画でコメントを寄せるという本人稼働のプロモーションを行った影響も大きかったのだろうか。
 曲数が13曲と多いものの、新曲はわずか3曲にとどまり半ベスト状態となった。ZARDらしさの根幹であった織田哲郎・栗林誠一郎・明石昌夫・葉山たけしが(完全ではないにしても)離れてしまってZARDサウンドが失われつつあることや、オリアルとしての完成度を規定するアルバム曲の充実度が落ちていくのが感じられて、筆者はあまり好きなアルバムではない。



 34位にはB'zの11枚目のオリジナルフルアルバム「ELEVEN」が113.2万枚でランクイン。本作は、B'zのオリジナルフルアルバムとしては初めて、明確なコンセプトを持たずに制作された。ただ、サウンドとしては一貫しており、ひたすら重くハードなサウンドとなっている。そのため、登場週数は39作中最低の12週となっている。先行シングルの「RING」なんかはドラマチックなアレンジで筆者は結構好きなのだが、いかんせん万人受けしないアルバムなので、B'zのアーティストパワーにものを言わせてミリオン突破したと言っても過言ではないだろう。



 35位にはB'zの12枚目のオリジナルフルアルバム「GREEN」が112.6万枚でランクイン。B'zにとってミリオンを突破した最後のオリジナルフルアルバムとなった。ひたすら重たかった前作と打って変わって、爽やかさとキャッチ―さを少し取り戻した結果、初動は5万枚程回復し、80.0万枚となった他、登場週数も4週増えて16週となった(それでも短いが…)。



 36位にはB'zの2枚目のミニアルバム「WICKED BEAT」が111.1万枚でランクイン。本作と前作「バッコミ」の両ミニアルバムはミリオンを突破しているが、登場週数が異常に長く、3年以上売れ続けてのミリオン突破のため、実は「RISKY」や「IN THE LIFE」の方がミリオンを突破した時期は早い。
 全4曲とも既発曲の英詞リメイクバージョンが収録されている。おそらく「BAD COMMUNICATION」のヒットを受けて、ロック色を強めたアレンジに変えてみたかったのだろう。また、アルバムでは本作より、原盤権がBMGビクターサイドからビーイングサイドに移った。



 37位にはTUBEの2枚目のベストアルバム「TUBEst Ⅱ」が110.2万枚でランクイン。globeの400万枚売れたアルバム「globe」、ドリカムのダブルミリオンアルバム「LOVE UNLIMITED∞」に阻まれ、初動33.4万枚を記録しながらも、最高位は3位どまりであった。
 この国にはベストアルバムを発売すると、その後の売上が下がるという法則があるが、1枚目のベストアルバムの発売で「織田哲郎提供時代」が終わり、本格的に「自作時代」に移っていったという分かりやすい区切りがあったこと、CDバブルが到来したことといった要素が運良くはまり、1枚目のベストアルバムの後は売上が増加した。一方、2枚目のベスト盤である本作の以前からシングルの売上が低下していたが、本作以降はさらに売上が低下している事実は否めない。しかし、アルバムも低下はしているものの、緩やかに減少しており、アルバムアーティストとしてのTUBEは結構安定していた。



 38位にはZARDの3枚目のオリジナルアルバム「HOLD ME」が106.5万枚でランクイン。本作より、アルバムの9作連続ミリオン記録が始まった。92年8月発売の先行シングル「眠れない夜を抱いて」がスマッシュヒットする中リリースされた本作は、前作「もう探さない」の初動1.5万枚の初登場48位から大幅に飛躍し、初動8.6万枚で初登場2位を獲得。92年だけで53.6万枚の売上を記録した。翌年の「負けないで」の大ブレイクに伴い、本作もじわじわと売れ続け、リリースから1年以上経った93年の10/4付でミリオンを突破。ついにミリオンセラーとなった。
 坂井泉水によると、「何十曲もあるデモテープの中から選りすぐった11曲」とのことで、「どれでもシングルにできるくらいの完成度」とも語っている。確かに、個性豊かな作曲家による多様な作品が収録されており、選りすぐられたバラエティーに富んだ作品となっている。しかし、アレンジは明石昌夫・葉山たけし両名による当時の王道のビーイングサウンドとなっているので、核となるZARDサウンドは一貫しているところが、本作にまとまりを与えている。



 39位にはTUBEの14枚目のオリジナルアルバム「終わらない夏に」が101.5万枚でランクイン。TUBEにとっては最初で最後のオリアルでのミリオンセラーとなった。この頃のTUBEはアルバムを初回版と通常版の2種でリリースしており、オ〇コンでは別々に集計されるものの、合算でミリオンを突破した。TUBEのアルバムの売上はかなり安定しており、前作や次作も90万枚程度を記録している。シングルでも最大のヒット作となった先行シングル「夏を抱きしめて」を収録している。


アーティスト別・形態別

 アーティスト別のランクイン数を表にまとめてみる。

アーティスト名 ミリオンアルバム数
B'z 19
ZARD 9
大黒摩季 4
TUBE 2
倉木麻衣 2
WANDS 1
T-BOLAN 1
DEEN 1
39

 B'zがおよそ50%、ZARDがおよそ25%を占め、残りの約1/4をその他のアーティストで占めるという結果になった。安定したアーティストはアルバムが着実に売れるという傾向が如実に現れた。シングルではミリオンの多かったWANDSが1作のみ、一方、シングルではミリオンのないTUBEが2作となった。
 分かりやすくするため、グラフにしてみる。また、形態別でもグラフ表示してみる。


 ※カーソルをグラフに当てると具体的な数と割合が表示されます。

 形態別では、オリジナルフルアルバムが最も多く、約6割を占め、次いでベスト盤が約3割、残りの1割強がミニアルバムとなっている。


登場週数と売上の関係

 最後に登場週数と売上の関係を見てみよう。
 登場週数が70週を超えるくらいになると、じわじわと売れたロングヒット作品が多く、ダブルミリオンのようなメガヒットにはなりにくいことが読み取れる。一方で、70週未満では、登場週数と売上は比例する傾向にあることが分かる。やはり一番多いのは、登場週数30週未満で100~200万枚の層である。これが一般的な売れ方なのだろう。


 かなり長い記事となったが、改めて90年代のビーイングの売上の高さを痛感させられた回となった。


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売上・チャート>14. ビーイング系ミリオンヒットアルバム特集

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