妄想アルバム ZARD BLEND~SUN&STONE~こうだったら良かったのに…

 今回はZARDの初コンピレーションアルバムにして初のサマーベストアルバム「ZARD BLEND~SUN&STONE~」の発売経緯と、こうだったらもっと有意義になったのに…という提案、というよりは”妄想”を勝手にしてみる。

発売の経緯

 97/4/26に発売されたB'z”非公認”の初ベストアルバム「Flash Back -B'z Early Special Titles-」にビーイングが抗議するために、ZARDのサマーベストアルバム「ZARD BLEND ~SUN&STONE~」は急遽同日にリリースされた。見事1位は阻止できたので、抗議という意味では成功した。

同日発売(97/4/26)の2枚
Flash Back -B'z Early Special Titles- ZARD BLEND~SUN&STONE~
初動47.9万
最高位2位
初動66.7万
最高位1位

 BMGビクターがビーイングサイドに一切の断りを入れずに(もちろん断りを入れずにリリースすること自体は合法)、「Flash Back -B'z Early Special Titles-」をリリースするらしいとビーイング側が聞いてから、「ZARD BLEND~SUN&STONE~」の発売に至るまで実際にどれくらいの時間があったのかは分からない。 しかし、内容は二の次にしてとりあえず抗議するためにリリースした感が否めず、サマーベストという割には選曲の基準が明確ではないように思われる。


坂井泉水のベスト盤に対する想い

 ZARDのレコーディングに携わったアシスタントエンジニア(当時)の吉田悠二氏が自身のブログにて当時のことを回顧されている。その中で、坂井泉水のベスト盤に対する想いを述懐している。


ーーー以下引用ーーー

 「ベスト盤は出さない!ベスト盤を出したら、アーティスト生命が終わってしまうから。」それが坂井泉水さんが良くおっしゃっていた言葉です。確かに、それまでのアーティストはベスト盤を出した頃には大抵影が薄くなって行くのが通例でした。売れなくなってきたからベスト盤を出そう、という風潮が多かったからです。
 しかし、時代はどんどんベストアルバム時代へ入って行きました。当時、本当にいろいろな有名アーティストがベストアルバムを出していました。そして、”ベストを出しても終わらない”アーティストがたくさん現れます。むしろ、ベスト盤を出したことで復活する様な動きまで出てきました。昔は、自分だけのベスト盤をカセットテープに作る事を皆楽しみにしていましたが、それをレコード会社がやってしまう時代が来たと言えます。

ーーー以上引用ーーー


 少なくともこの証言から坂井泉水自身がベスト盤のリリースに対しては非常に後ろ向きであったことが分かる。ただ、どんどんベストアルバムが売れる時代に入ったのは、むしろ97年の後半から98年にかけて(GRAYに始まり、ドリカム、安室奈美恵、B'z、サザン、ユーミン、広瀬香美などと続いた)なので、この話は「シングルコレクション~軌跡~」のリリースの際と時系列を混同している可能性が高い。長戸氏の鶴の一声によりサマーベストの発売が決まり、坂井泉水は渋々ながらも了承せざるを得なかったに違いない。


SUN&STONE収録曲を検証

 SUN&STONEの収録曲がどこまでサマーベストの体をなしていたのか検証してみる。

夏要素の有無
曲順 曲名 夏曲 夏要素
01 君に逢いたくなったら ×
02 揺れる想い ポカリスエットCMソング
歌詞:夏が忍び足で近づくよ
03 君がいない 歌詞:海岸沿いの店を
04 心を開いて ポカリスエットCMソング
05 Good-bye My Loneliness ×
06 IN MY ARMS TONIGHT 歌詞:秋の気配が近づくわ
07 あの微笑みを忘れないで 歌詞:25時砂の上に車を止めて語り明かしたあの夏
08 OH MY LOVE 歌詞:広い背中に問いかける夏
09 来年の夏も タイトル
10 ハイヒール脱ぎ捨てて 歌詞:青い海が見たいわ
11 Don't you see! ×
12 眠れない夜を抱いて
13 こんなに愛しても~Hold Me~

 曲調や歌詞、タイアップなどから、明確に夏曲と言えるのは、「揺れる想い」「心を開いて」「あの微笑みを忘れないで」「OH MY LOVE」「来年の夏も」の5曲くらいである。「眠れない夜を抱いて」、「こんなに愛しても」は夏の季語こそ出てこないものの、曲調や歌詞から、夏っぽい雰囲気は感じられる。

 「君がいない」や「IN MY ARMS TONIGHT」はどちらかというと夏というより秋の印象が強い。「IN MY ARMS TONIGHT」は「秋の気配が近づくわ♪」と歌っているが哀愁のあるメロディーからすると、晩夏というよりは初秋の方がピッタリである。
 「ハイヒール脱ぎ捨てて」は、「四月前の電車は」という歌い出しで始まり、「青い海が見たいわ 二人でよく行ったから」と回想にふけっている。歌詞に夏の話が出てくるのは確かだが、どこか遠い記憶というような趣で、夏真っ盛りというふうには捉えにくい。

 「Don't you see!」と「君に逢いたくなったら」は、このアルバムのせいで、次のオリジナルアルバムのリリースが遅れることを見越して、行き場がなくなる前に、”とりあえず収録した”というのが本当のところだろう。

とりあえず収録された直前のシングル2枚
事実上の先行シングルに。

 「Good-bye My Loneliness」はデビュー曲だから話題作りのために入れたに過ぎないと思われる。実際、その頃からのファンはごく少数なため、後追いでデビュー曲を回収したい人にとっては非常に都合が良い


TODAY IS ANOTHER DAY はオリジナルアルバムなのか

 「ZARD」・「夏」と言えばやはり「ポカリスエット」である。93年、96年と2度にわたりZARDがCMソングを手掛けただけでなく、94年、95年は坂井泉水が作詞した曲が提供され、後にセルフカバーまでしている。 サマーベストを名乗るなら、やはりポカリのCMソングは外せないだろう。

 ということで、「ZARDの夏曲」+「セルフカバー」にすれば面白いアルバムになったのではないかと思うわけである。キャッチコピーは”ポカリソングを坂井泉水の声で”的な感じでどうだろうか?いささか安直すぎる気もしないではないが…

 ただのセルフカバーではなく、大ヒット曲のセルフカバーばかりなので、十分にベストという位置づけでも通用するのではないか思うのだが、どうなのだろうか。セルフカバー全てが初出しでなくとも構わないが、初出し曲が多い方がこのアルバムの意義が出るというものである。 そのように考えると、96年の「TODAY IS ANOTHER DAY」のセルフカバーの多さがこのアルバムの存在意義を低下させてしまう。やはり、オリジナルアルバムというからには、新曲(アルバム曲)を充実させるべきだったのではなかったのだろうか。
 この頃のZARDはセルフプロデュースに移行したためか、果てしないレコーディングが常態化し、行き詰まっていた様なので、いっそのこと思い切って葉山たけしに全てを任せるくらいのことをしてみても良かったのではないだろうか。(葉山たけしならサウンドプロデューサーとしての実績も大黒摩季で証明済。) 「マイフレンド」や「ら・ら・ら」、「突然」、「DAN DAN 心魅かれてく」など、アレンジャーとして大ヒットを連発していた95,96年当時の葉山たけしが全曲の編曲を務めたなら、全曲の編曲を明石昌夫が務めた「OH MY LOVE」と対をなす、素晴らしいオリジナルアルバムとなったのではないだろうかとも思える。


ZARD SUMMER HITS ~BEST&SELF COVER~

 結局、「TODAY IS ANOTHER DAY」をもっとアルバム曲の多いアルバムにするべきという話にそれてしまったが、話を本題に戻そう。「TODAY IS ANOTHER DAY」が(少なくとも実際のものよりは)新曲の多いオリアルだと仮定して、サマーベストを妄想してみる。

 タイトルは、ずばり、
「ZARD SUMMER HITS ~BEST&SELF COVER~」
である。

 収録曲は以下のようにしてはどうだろうか?
 ZARDの曲が8曲、セルフカバーが5曲。特に、セルフカバーはDEENから2曲、FOVから3曲をそれぞれセレクトした。収録曲の売上も、初期の「眠れない夜を抱いて」を除けば、自身の曲は70万以上、セルフカバーを含めても全て50万以上の大ヒット曲ばかりである。

収録曲目録
曲順 曲名 作曲 編曲 原曲 売上(万枚)
01 突然 織田哲郎 葉山たけし FIELD OF VIEW 122.4
02 眠れない夜を抱いて 織田哲郎 明石昌夫・池田大介 ZARD 45.8
03 翼を広げて 織田哲郎 明石昌夫 DEEN 57.1
04 こんなにそばに居るのに 栗林誠一郎 明石昌夫 ZARD 78.8
05 君がいたから 織田哲郎 葉山たけし FIELD OF VIEW 89.8
06 愛が見えない 小澤正澄 葉山たけし ZARD 72.1
07 雨に濡れて 栗林誠一郎 明石昌夫 ZARD アルバム曲
08 瞳そらさないで 織田哲郎 池田大介 DEEN 103.8
09 あの微笑みを忘れないで 川島だりあ 明石昌夫 ZARD アルバム曲
10 DAN DAN 心魅かれてく 織田哲郎 葉山たけし FIELD OF VIEW 52.8
11 来年の夏も 栗林誠一郎 明石昌夫 ZARD アルバム曲
12 心を開いて 織田哲郎 池田大介 ZARD 74.7
13 揺れる想い 織田哲郎 明石昌夫 ZARD 139.6

 実際に発売されたものと筆者の妄想アルバムの両者に含まれているのは、「眠れない夜を抱いて」、「あの微笑みを忘れないで」、「来年の夏も」、「心を開いて」、「揺れる想い」。このあたりは誰しもがZARDのサマーベストともなれば外せないナンバーになるだろう。
 仮に、「TODAY IS ANOTHER DAY」が全曲葉山たけしの編曲であったならば、「心を開いて」はアルバムに初収録となり、それだけでも結構価値のあるアルバムになる。

 筆者が勝手に加えたのが、「こんなにそばに居るのに」と「愛が見えない」、「雨に濡れて」の3曲である。このあたりは、今後(99年)のベストアルバムを見越して選曲から外したものだと思われる。

 ZARDの曲は、発表済の音源をそのまま入れたが、「翼を広げて」はこの時点で既にお蔵入りしていた明石昌夫編曲のもの(=没後に発表されたもの)を使用。「瞳そらさないで」は「forever you」にて明石昌夫のアレンジで既に録っているので、池田大介のアレンジをぜひ聞いてみたいFOVの3曲は、原曲と同じで葉山たけしの王道アレンジでいくのが良いと思う。この頃の葉山たけしは爽やかなロックを究めているので、ZARDでもこのアルバムでその力を見せてほしかった。

 筆者の妄想アルバムなら、かなりサマーベストらしい内容になったのではないかと思う。単なるベストではなく、コンセプトアルバムとしても十分に意義のある内容であろう。
 ZARDの夏のシングルは網羅しつつ、アルバム曲からも選曲、ポカリソングもコンプリートして、セルフカバーも充実したものになっており、我ながら素晴らしい選曲に感じるのだが、読者の皆さんはどう思われるだろうか?


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アーティスト別ZARD>3. 妄想アルバム ZARD BLEND ~SUN&STONE~

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