ビーイングブーム徹底解析 その3

~ビーイングブーム前夜(91年)~

 今回はビーイングブーム徹底解析の第3弾として、ビーイングブーム前夜について取り上げる。前回の1990年に続いて、今回は1991年。


1991年の年間ランキング

 まずは、91年のシングルとアルバムの年間ランキングをそれぞれ示す。

91年の年間シングルTOP100
順位 シングル名 アーティスト名 年間売上(万) 発売年月日
7位 LADY NAVIGATION B'z 100.5 91/3/27
10位 ALONE B'z 68.5 91/10/30
15位 さよならイエスタデイ TUBE 55.5 91/7/1
23位 ギンギラパラダイス / 君にコケコッコー! B.B.クィーンズ 43.9 90/12/19
32位 想い出の九十九里浜 Mi-ke 35.5 91/2/14
34位 おどるポンポコリン B.B.クィーンズ 33.6 90/4/4
64位 湘南My Love TUBE 22.3 91/5/2
69位 Good-bye My Loneliness ZARD 20.9 91/2/10
75位 ブルーライト ヨコスカ Mi-ke 20.6 91/6/13

91年の年間アルバムTOP100
順位 アルバム名 アーティスト名 年間売上(万) 発売年月日
3位 MARS B'z 138.9 91/5/29
10位 RISKY B'z 86.7 90/11/7
26位 BAD COMMUNICATION B'z 52.3 89/10/21
30位 WICKED BEAT B'z 48.2 90/6/21
38位 湘南 TUBE 42.0 91/5/29
39位 TOMORROW 浜田麻里 41.6 91/10/19
58位 BREAK THROUGH B'z 30.8 90/2/21
65位 OFF THE LOCK B'z 26.8 89/5/21
84位 B'z B'z 19.6 88/9/21


B'zがついにブレイク!

 4作のシングルをリリースした前年とはうって変わって、シングルは2作をリリース。前年のシングルは30万~40万程度の売上であったが、「LADY NAVIGATION」は1年近くチャートインし続けるロングヒットで、本作から13作連続ミリオンを達成することになる。
 年間チャートには7位に「LADY NAVIGATION」10位に「ALONE」が入った。まさに91年はB'zの全盛期の始まりの号砲がなった年であったわけである。
B'zのシングルミリオン記録についてはこちら↓ B'z シングルミリオン連続記録について

 一方、アルバムに関しては、91年に発売されたアルバムはミニアルバム「MARS」と年末のフルアルバム「IN THE LIFE」であったが、集計期間の関係上、「IN THE LIFE」は翌年のランキングにランクインしている。
 91年は明確に売上がぐんぐんと伸びた時期で、ブレイクに伴い旧譜が続々ランクイン。 この年に発売された「MARS」が約140万枚の年間セールスで年間3位にランクインしただけでなく、なんと旧譜を含めて7作も年間TOP100位圏内にランクインした。驚くべきことに2年前(89年)発売の「BAD COMMUNICATION」(通称バッコミ)も含め、前年より売上が伸びている作品ばかりである。(下図参照)
 前年発売のフルアルバム「RISKY」が大きな売上をあげたのは当然だが、それ以前のアルバムや実験的な要素の強いミニアルバムまでもがことごとく売上を伸ばしている。
 「バッコミ」と「WICKED BEAT」は売上総数だけでなく、売れ方までほぼ同じであったことが分かる。 91年が旧譜作品の最大売上年であり、ほとんどの作品は92年の売上は91年比で半分以下(黄色が赤の半分以下の長さ)であるが、「OFF THE LOCK」だけは92年もそれなりに売れている。89年の作品まではファンになってすぐには手を出そうとは思わず、どんどんB'zにハマっていくなかでより昔の作品も聴いてみようと思った人が増えたのだろう。
 ちなみに、トップ100位以内に入ったシングル・アルバムだけでも572.3万枚を売上げ、91年の年間トータルセールスの堂々1位に輝いた。すでに邦楽界の頂点に立ったB'zだが、まだこの時点ではB'zが人気になったというだけで、ビーイング系全体がブームになったというわけではない。

 どうでもいいが、最初の5作は全て21日に発売されている。何か特別な理由でもあったのだろうか?


安定期に入ったTUBE

 91年のTUBEはシングル2作とアルバム1作をリリース。この年以降、95年頃までは、5月に先行シングル「迎夏シングル」→6月に「アルバム」→7月に「盛夏シングル」という流れが確立されていた。
 売上も91年の盛夏シングル「さよならイエスタデイ」以降、6作連続で50万以上の売上を記録することになり安定期に入る。「さよならイエスタデイ」は年間15位にランクインする大ヒットで、本格的に「夏=TUBEかサザン」というイメージができつつあった。 また、本作で自作体制(作詞:前田亘輝 作曲:春畑道哉)に移行してから初めのチャート3位以内(3位)を記録した。
 湘南My Loveは20万強の売上で64位であったものの、この曲が収録されたアルバム「湘南」は38位にランクインしている。


徹底的なお遊び路線

 91年もまだまだ”コミックバンド”「B.B.クィーンズ」の話題性は十分で、前年の年間ランキング1位の「おどるぽんぽこりん」は91年に入ってからも30万枚あまりを売上げた。 さらに、90年の末に発売された「ギンラパラダイス」は40万枚以上の売上を記録。前作に続き、バカげた詞ではあるが、今回は社長の長戸大幸自らが作詞を手掛けている。

 そして、B.B.クィーンズのコーラス隊であった、”B.B.クィーンズシスターズ”がアイドルグループ”Mi-Ke”としてデビュー。Mi-keは60~70年代のグループサウンズ(GS)を中心に”オマージュ”を徹底的に貫いた。
 デビューシングル「想い出の九十九里浜」が年間32位にランクインする好スタートを切った。この歌はテレビドラマの主題歌のタイアップがついた上に、懐かしのグループサウンズが中年以上の世代に受けたためか、最高位5位ながらもじわじわと46週もランクインし続けた。(まるで演歌のような売れ方)
 2作目では、ザ・カーナビーツのカバー「好きさ好きさ好きさ」をリリースしたが、カバーはさすがに売上的には芳しくなく(笑)。 3作目のシングル「ブルーライトヨコスカ」はおよそ20万枚の売上を記録。歌詞はところどころ「ブルー・ライト・ヨコハマ」のパクリだが、意外にもメロディーは似ていない。これもロングヒットを記録した。

 B.B.クィーンズ,Mi-keともに3年程度で活動を終了したことからも、一時のブームになってしまった事実は否定できないが、徹底的にお遊び路線を貫き、それが世間に評価されたのである。


相次ぐ新人のデビュー

 この年は後のビーイングブームの主役となる新人のデビューも相次いだ。
 ZARDが2/10に「Good-bye My Loneliness」でデビュー。ドラマ主題歌に起用されたことから、デビューシングルながらもTUBEの「湘南My Love」に匹敵する20万枚を売上げ、年間69位にランクインした。
 さらに、7/10にT-BOLANが「悲しみがい痛いよ」でデビュー。12/4にはWANDSが「寂しさは秋の色」でデビューした。

 他にも、川島だりあが4/25にポカリスエットCMソングの「Shiny Day」でデビューというか再デビュー(改名してビーイングの所属に)したほか、8/21にはアルバム「KIX-S」でKIX-Sがデビューしている。 もっとマイナーなところで言えば、中畑幾久子が3/6に「恋のナースステーション」でデビュー、11/21には「お誂え向きのDestiny」でKEY WEST CLUBがデビューしている。

 参考までに表にまとめておく。

91年デビューの新人
アーティスト名 デビューシングル(S) / アルバム(A) デビュー日
ZARD Good-bye My Loneliness (S) 2/10
Mi-ke 想い出の九十九里浜 (S) 2/14
中畑畿久子 恋のナースステーション (S) 3/6
川島だりあ Shiny Day (S) 4/25
DIMENSION Le Mans (A) 6/24
T-BOLAN 悲しみが痛いよ (S) 7/10
KIX-S KIX-S (A) 8/21
KEY WEST CLUB お誂え向きのDestiny (S) 11/21
WANDS 寂しさは秋の色 (S) 12/4


 次回は、ビーイングブームに入りかけの92年を特集する。


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