J-POP黄金期に活躍したアーティストの現在

 今回は、JPOP黄金期に活躍したアーティストの現在について語る。

運命の分かれ目00年代初頭

 今回は1996年以前にデビューし、最盛期を迎えた人たちが現在も第一線で活躍しているかどうかについて。
 また別の回で話そうと思うが、同じ90年代でも世紀末の97~99年というのは、少し異質に感じる。 その90年代末期を乗り越えて、00年代の序盤、具体的には00年~03年にヒットを出せたかどうかが現在を左右する傾向にある。 もちろん例外はあると思うが、今回、それを見ていく。

 ※90年代の後半に全盛期を迎えた人は00年代の初頭でもその流れでヒットを出しているので今回は除外する。

 ※ライブを大々的に行うアーティストかどうかで変わってしまうので、指標としては適切ではないかもしれないが、現在でも活躍しているかどうかをライブの観客動員数で今回は判断した。


21世紀以降の最大売上シングル

 まず、00年以降の最大売上を記録したシングルを列挙してみる。動員数は手元にデータのある2014年~2019年までの年間観客動員数のうち、動員数が最大の年の数値である。(年間50位まで)
※実質的に活動していないとみなした場合(森高千里、X JAPAN、シャ乱Q)は活動休止と記載した。

アーティスト名 デビュー年 シングル名 発売年月日 枚数(万) 動員数(万)
小田和正 1967年 キラキラ 2002/2/27 29.9 47.5
井上陽水 1969年 コーヒー・ルンバ 2001/1/24 11.9 10万未満
松任谷由実 1972年 幸せになるために 2001/1/11 10.1 27.4
中島みゆき 1975年 地上の星/ヘッドライト・テールライト 2000/7/19 111.6 10万未満
サザンオールスターズ 1978年 TSUNAMI 2000/1/26 293.6 65.9
長渕剛 1978年 しあわせになろうよ 2003/5/1 29.3 10万未満
CHAGE&ASKA 1979年 ロケットの樹の下で 2001/4/25 7.9 10万未満
氷室京介 1981年 Girls Be Glamorous 2001/1/1 9.0 35.4
布袋寅泰 1981年 RUSSIAN ROULETTE 2002/2/6 10.0 10万未満
玉置浩二 1982年 プレゼント 2005/11/2 4.2 10万未満
藤井フミヤ 1983年 INSIDE 2000/5/10 7.9 10万未満
中山美穂 1985年 歌手活動休止
TUBE 1985年 虹になりたい 2000/6/28 40.4 10万未満
今井美樹 1986年 Goodbye Yesterday 2000/2/9 50.5 10万未満
森高千里 1987年 活動なし
B'z 1988年 今夜月の見える丘に 2000/2/9 112.9 108.5
X JAPAN 1989年 解散
DREAMS COME TRUE 1989年 やさしいキスをして 2004/2/18 31.6 55.7
槇原敬之 1990年 チキンライス 2004/11/17 18.9 10万未満
福山雅治 1990年 桜坂 2000/4/26 229.9 70.6
ZARD 1991年 Get U're Dream 2000/9/6 24.1
T-BOLAN 1991年 解散
WANDS 1991年 解散
スピッツ 1991年 遥か 2001/5/16 31.7 26.9
大黒摩季 1992年 Anything Goes! 2010/11/17 7.0 10万未満
Mr.Children 1992年 四次元 Four Dimensions 2005/6/29 92.6 111.9
シャ乱Q 1992年 活動休止
広瀬香美 1992年 More More Love Winters 2000/11/22 6.9 10万未満
DEEN 1993年 秋桜~more&more~ 2000/9/13 4.1 10万未満
trf 1993年 Where to begin 2006/1/18 2.1 10万未満
安室奈美恵 1995年 NEVER END 2000/7/12 64.0 85.4
MY LITTLE LOVER 1995年 shooting star
~シューティングスター~
2001/2/28 5.2 10万未満
globe 1995年 Stop! In Name of Love 2001/11/14 14.4 10万未満
華原朋美 1995年 Never Say Never 2001/4/18 7.9 10万未満
相川七瀬 1995年 midnight blue 2000/5/31 8.4 10万未満

 次に、アルバムについても特筆すべきものがある場合のみ見ていく。
アーティスト名 デビュー年 シングル名 発売年月日 枚数(万) 動員数(万)
小田和正 1967年 自己ベスト 2002/4/24 261.8 47.5
井上陽水 1969年 UNITED COVER 2001/5/30 51.7 10万未満
松任谷由実 1972年 sweet, bitter sweet
YUMING BALLAD BEST
2001/11/14 87.9 27.4
松任谷由実 1972年 40周年記念ベスト
日本の恋と、ユーミンと。
2012/11/20 82.7 27.4
TUBE 1985年 TUBEst Ⅲ 2000/5/13 93.4 10万未満
DREAMS COME TRUE 1989年 DREAMS COME TRUE
GREATEST HITS "THE SOUL"
2000/2/14 236.0 55.7
槇原敬之 1990年 EXPLORER 2004/8/11 56.8 10万未満
ZARD 1991年 Golden Best
~15th Anniversary~
2006/10/25 94.3
安室奈美恵 1995年 BEST FICTION 2008/7/30 155.0 85.4


第1線級アーティスト

 やはり長年、日本の音楽シーンのトップに君臨している、サザン、B'z、ミスチルがミリオンもしくはミリオンに近いヒット曲を00年以降にも世に送り出している。 この3組は売上、歴代作曲家ランキング、知名度等を総合的に見てもその地位は不動のものであるように感じる。2010年代でも、コンサートの動員数がトップ10に入るだけのアーティストパワーを有している。(下図参照)
 また、00年以降は柴咲コウのプロデュースも手掛け、女性ファンからの支持が厚い福山雅治もダブルミリオンを記録している。福山雅治はライブの観客動員数も21世紀に入って以降もトップクラスである。
 小田和正は、シングルはそこそこといった売上だが、2002年に出したベストアルバムでダブルミリオンを達成している。21世紀に入ってからも精力的にライブを行い、観客動員数もトップ10に入ることもあるり、この世代のアーティストとしては唯一、日本の音楽シーンの第一線で活躍している。(あとはこの世代は矢沢永吉くらいか…) 何より、あの年齢でライブを当たり前のようにこなしていることには脱帽するばかりだ。
 女性ボーカルで言えば、中島みゆきが「地上の星」でミリオンを達成しており、独特な世界観で他のアーティストとは一線を画しているようだ。ただ、大会場でのライブはやらない主義らしいので、どれくらい動員できるのかは分からない。 また、安室奈美恵も08年に出したベストアルバムが150万オーバーを売り上げており、小室哲哉ブームが去った後も唯一TKファミリーで第一線に生き残っていた。そして、2017年に250万近い売上を誇る最後のオリジナルアルバムを引っ提げて全国ツアーを行い引退、坂井泉水と共に"伝説の歌姫"となった。
 ドリカムも00年以降の売上はそこまで良いわけではないが、ライブの観客動員数はトップクラスである。

第1.5~2線級アーティスト

 第一線とはなかなか言えなくなったのが、ZARD、TUBE、松任谷由実といった面々だ。
 松任谷由実はもともとアルバムアーティストだったので、90年代にシングルも売れたのが異常だっただけなのだが、00年以降はオリジナルアルバムの売れ行きも芳しくない。しかし、ベストアルバムはミリオン近くまで引っ張っている。 バブルのイメージが強く、どうしても過去の人という印象がついてしまっている節は否めないが、それでもコンサートも精力的にこなしている。コロナ前までは苗場のコンサートも30年以上継続していた。
 ユーミンの苗場と同様に横浜スタジアムでのコンサートを毎年行っていたのがTUBEである。固定ファンが一定数いるので、00年以降もだいたいチャート10位以内に入っているが、全盛期ほどの活躍は見られなくなってしまった。
 ZARDも坂井泉水が逝去するまで、固定ファンに支えられ、オリコンチャートには10位以内に入り続けた(そういう意味では十分第一線だったのかもしれないが…)ものの、2000年シドニー五輪のNHKテーマソングという大型タイアップがついた「Get U're Dream」でも25万弱という結果に終わってしまったことにはアーティストパワーの低下を感じる。 これの原因は明確なのだが、それはまた別の回にて。
 槇原敬之は本人の売上はそこそこというか、ZARDほどもないくらいだが、03年発売の「世界に一つだけの花」を作詞作曲したことで、シンガーソングライターとしてだけでなく、作曲家、作詞家としても一流として認められたという面がある。 再び薬物に手を染めてしまったが、今度こそ更生してほしいものである。

第一線からは消えたアーティスト

 00年代序盤にヒットを出せなかったアーティストは、ほとんどの割合で、ごくわずかの固定ファン以外への訴求力がなくなって、第一線からは消え去った。ビーイング系で言えば、DEEN、大黒摩季、FOVなどが該当する。表にあがっているアーティストで言えば、チャゲアスといった大物から、安室奈美恵以外の小室ファミリー、布袋寅泰、MY LITTLE LOVERなどである。 氷室京介は売上は芳しくないものの、10年代にドームツアーを成功させており、例外に当たる。
 また、激動の90年代を乗り越えられずに活動休止や解散に至ってしまったバンドも数多く存在する。そういったバンドの存在が、激動の90年代を乗り越えて、現在でも第一線でも活躍することがいかに難しいかを物語っている。


 散布図で表してみると次のようになる。観客動員数が少ない場合、データが手元にないので、適当に2万、もしくは7万と設定した。(←ガバガバ)
まあ、やや相関がなくもないといった程度か?
散布図



10年代のライブ観客動員数

 参考までに、2013年、2015年,2019年のライブ観客動員数トップ50を載せておく。(出典元:日経新聞のサイト)

・2013年
2013
・2015年
2015
・2019年
2019

・その他の年の記事のリンク(リンク切れが生じている可能性があります。)
2014年の記事 2016年の記事 2017年の記事 2018年の記事


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