名曲の宝庫 スラムダンクOP・ED特集

 ビーイング系のポカリスエットとならぶタイアップ成功例といえばテレビ朝日系アニメ「スラムダンク」である。 ビーイングは、スラムダンクのOP2曲,ED4曲の全6曲を担当し、どれもが見事にヒットした。


基本データ

 まず、スラムダンク主題歌の放送期間、売上、最高順位、作者等をまとめた。

スラムダンク主題歌一覧
OP / ED 放送期間 アーティスト 曲名 作詞 作曲 編曲 最高位 売上(万枚)
OP 1話~61話 BAAD 君が好きだと叫びたい 山田恭二 多々納好夫 明石昌夫 16位 37.6
OP 62話~101話 ZYYG ぜったいに 誰も 高山征輝 織田哲郎 ZYYG 3位 28.7
ED 1話~24話 大黒摩季 あなただけ見つめてる 大黒摩季 大黒摩季 葉山たけし 2位 123.6
ED 25話~49話 WANDS 世界が終るまでは… 上杉昇 織田哲郎 葉山たけし 1位 122.1
ED 50話~81話 MANISH 煌めく瞬間に捕われて 高橋美鈴
川島だりあ
川島だりあ 明石昌夫 6位 44.8
ED 82話~101話 ZARD マイ フレンド 坂井泉水 織田哲郎 葉山たけし 1位 100.1
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 6曲中実に3曲がミリオンヒットとなっている。アニメ主題歌でミリオンを達成したのは10作(1990年~2010年)しかなく、そのうちの3作がスラムダンク主題歌なのだから、アニメタイアップで最も商業的に成功した例と言える。WANDS,ZARD,大黒摩季なんかは元々アーティストパワーが大きいのに加えて、アニメファンまで取り込んだことで、メガヒットにつながった。
 一方、MANISH,BAAD,ZYYGの3組はアーティストパワーは小さいながらも、楽曲の良さと好タイアップで、MANISH,BAADにとっては自身最大のセールスを記録した。ZYYGにとっても自身2番目のセールスを記録し、約2年ぶり(デビューシングル以来)の週間チャートTOP3以内を記録した。

 作詞は全てボーカルが手掛けている。いかにもビーイング系らしい。
 作曲は6曲中3曲が織田哲郎。大人の心だけでなく、アニメを見る子供の心の琴線にも触れる楽曲を創る才能まで持っているとは、織田哲郎恐るべしといったところである。他の3曲は、川島だりあ、多々納好夫、大黒摩季とビーイングオールスターの面々である。栗林誠一郎はアニメソングに好まれるようなキャッチ―な曲を得意としていなかったためか、意外にも1曲も作曲を担当していない。

 編曲はミリオンの3曲全てが葉山たけし、残り2曲が明石昌夫、残り1曲がZYYGでクレジットされている。葉山たけしは3/3ミリオンなのですさまじい記録だが、葉山たけしの手掛けたアーティストの方がアーティストパワーが圧倒的に強いので、このあたりは単純にセールスを比較することはできない。逆に、明石昌夫は明石昌夫で、BAAD,MANISHでこれだけのセールスを記録したのがすごいとも言える。
 どちらにせよ、ビーイングのオールスター軍団が名曲を生み出していたことがよく分かる。


君が好きだと叫びたい

 BAADにとって最高売上の37.6万枚を記録した3rdシングル「君が好きだと叫びたい」。二番手のシングルが2ndシングル「愛したい愛せない」の5.0万枚なので、いかに破格のセールスを記録したかが分かる。主題歌のうち、唯一最高位が二桁(16位)の作品である。
 初代オープニングとして、最も長い期間使用されただけあって、スラムダンクの主題歌といえばこの歌を思い浮かべる人も多いかもしれない。


ぜったいに 誰も

 「ぜったいに 誰も」は後期のオープニングで、6曲の中では最も存在感が薄いかもしれない。爽やかさよりも、スポーツ漫画のもつ”男臭さ”や”汗臭さ”といった部分を表現している印象が強い。 ビーイングのメイン作家の1人である栗林誠一郎のために結成されたZYYG。そんなZYYGから栗林誠一郎が脱退して新体制(第2期)になって初のシングルである。
 デビューシングルと同様に織田哲郎からの楽曲提供を受けたが、全編曲を栗林誠一郎が手掛けた第1期とは異なり、編曲はZYYG名義になった。
 織田哲郎自身も「勢い」を強調しているように、非常に疾走感の感じられる楽曲となっている。ZYYGの編曲だが、明石昌夫に影響を受けたであろうディストーションギターの主張の強いアレンジに仕上がっている。


あなただけ見つめてる

 初代エンディングテーマは大黒摩季の「あなただけ見つめてる」。大黒摩季の曲のなかでは、「ら・ら・ら」の133.9万枚に次いで、2番目のセールスを誇る。広瀬香美「ロマンスの神様」が爆発的にヒットしていたため、最高位2位止まりながらも、最高位1位を獲得した「世界が終るまでは…」を抑え、スラムダンク主題歌の中で売上は第1位である。
 この頃の葉山たけしはオケヒ(オーケストラヒット)を多用(乱用)しており、イントロ、サビではオケヒによるインパクトが強い。ブラスとシンセで明るくしており、THE90年代の一曲でもある。

 バスケのアニメ主題歌でありながら、「サッカーさえも好きになったわ」という歌詞が出てくるのは有名な話である。確かに93年は、Jリーグが始まった年でもあるし、ビーイング系はサッカー関連のタイアップばかり取ってきていた(DEENの「翼を広げて」、TEARSの「眩しいほど綺麗になったね」、春畑道哉「J's THEME」など) とはいえ、アニメの放送時には歌詞を差し替えるくらいなら、初めからなんとかならなかったものなのかと思えてしまう…


世界が終るまでは…

 WANDSにとっては4作目にして最後のミリオンとなった「世界が終るまでは…」が2代目のEDとして使われた。前週発売で年間1位になった「innocent world」を抑え、2週連続で週間1位を記録した。(ちなみにその次の1位はDEENの「瞳そらさないで」)
 作詞は上杉昇、作曲は織田哲郎、編曲は葉山たけしと最強のコンビイントロのギターのリフから名曲の雰囲気に満ちている。曲自体は織田哲郎らしいキャッチ―さを備えながらも、どこか退廃的なムードを漂わせているところが非常にカッコイイ。「大都会に…♪」で始まる歌詞もまた秀逸であるし、「世界が終るまでは」というフレーズもインパクトが大きい。


煌めく瞬間に捕われて

 MANISH最大のヒット(44.8万枚)となった10thシングル「煌めく瞬間に捕われて」。3代目のEDに起用された。「煌」なんていう漢字はこの曲で知ったという人も多いくらいではないだろうか。
 彼女たちにとってそれまでの最大のヒット曲が7thシングル「もう誰の目も気にしない」の20.2万枚だったので、ダブルスコアで上回っている
 栗林誠一郎からの楽曲提供を受けた「走り出せLonely Night」に引き続き、今度は川島だりあからの楽曲提供であった。川島だりあにとっても最大のセールスを記録したシングルであると思われる。さらに、作詞も川島だりあとボーカル高橋美鈴の連名でクレジットされている。一方で、両A面の「眩しいくらいに」は自作曲である。

 女性版B'zと呼ばれることもあるMANISHだが、ボーカルとギターではなく、ボーカルとキーボードであることから、キーボードがより主体となった楽曲に仕上がっている。キャッチ―なメロディーとハードなサウンドはビーイング系ど真ん中とも言える。 明石昌夫がZARDなどで使っていた、「ドゥッッ ドゥ ドゥッッ ドゥ」というリズムのベースラインを、キーボードで演奏しているのが特徴的に感じられる。

 ちなみに上記のPV+TVの方の動画で、テレビ出演時に後ろでベースを弾いている金髪の人が明石昌夫である。


マイ フレンド

 エンディングのトリを飾ったのが、ZARDの17thシングル「マイ フレンド」3枚目にして最後のミリオンヒットとなった。「世界が終るまでは…」と同じ、作曲:織田哲郎、編曲:葉山たけしという布陣で制作された。
 歌詞は、「負けないで」以来の応援歌らしい応援歌となっている。「ずっと見続けてるから 走り続けて♪」は、「負けないで」の「どんなに離れてても 心はそばにいるわ 追いかけて 遥かな夢を」に通じるところがある。当時、スラムダンクを見ていた男どもは「坂井さんにこんなこと言われてみてぇ」と思ったことだろう(笑)。

 信用できないことで有名なビーイングのお抱えライター斉田才が、”織田哲郎が作った2曲を長戸Pが繋げた”とライナーノートに書いたことがあるが、真偽のほどは不明。葉山たけしらしい高音をうまく使った編曲になっている。原案ではアカペラから始まっていたが、あとからこの印象的なイントロがつけられた。


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