B'zにとって最大の問題作!?
Flash Back -B'z Early Special Titles-

 今回は、B'zにとって初のベストアルバムにして、初の”非”公認アルバムである「Flash Back -B'z Early Special Titles-」について取り上げる。

基本データ

1997/4/26発売
発売元:BMGビクター
初動47.9万枚
初登場2位
最高位2位
売上99.4万枚

非公認ベストのジャケット
本人の許可がないためジャケ写に顔写真を使えなかった。


収録曲

 どのアルバムから何曲中何曲が「Flash Back -B'z Early Special Titles-」に収録されたかを表にして示す。

アルバムNo. アルバム名 年月日 売上(万) 採用された曲数
1st B'z 88/9/21 33.8 5/9
2nd OFF THE ROCK 89/5/21 60.8 9/10
1stミニアルバム BAD COMMUNICATION 89/10/21 118.2 3/3
3rd BREAK THROUGH 90/2/21 72.5 7/11

 4thシングル「BE THERE」(90/5/25)以前のシングル・アルバム収録曲全33曲のうち、実に24曲(73%)が回収できるという後追いファンにとっては結構ありがたいアルバムであるのは事実である。
 アルバムの売れ行きから推測するに、97年春時点でのB'zファンは200万人以上いたと思われるが、1st~3rdアルバムの売上は30万から75万程度なので、未入手のファンが150万人くらいいたことになる。よって、BMGビクター側は、潜在的には150万枚くらいは売り上げるくらいの価値があると考えてリリースしたと思われる。


連続ミリオン記録ストップ

 売上が99.4万枚と惜しくも100万枚に達しなかったことから、B'zの非公認アルバムであるにも関わらず、B'zのアルバム連続ミリオン記録が途切れてしまった

 仮に、このアルバムがミリオンを達成していたとしたら、2ndミニアルバム「WICKED BEAT」(90年)からバラードベスト「The Ballads~Love & B'z~」(02年)まで18作連続でミリオンを達成していたことになり、ぶっちぎりで1位であった。 そうなれば、9作連続で1位の記録を持っているZARDがダブルスコアの差をつけられて2位に陥落してしまう…。
 まあ、O社基準では、なぜか「B'z TV Style シリーズ」も含まれるので、本作がミリオンを達成していたとしても10作連続ミリオン記録までにしかならないのだが…。今はなきプラネットチャートとかなら記録も異なったのだろうか?
 仮に、このアルバムがリリースされていなければ、17作連続ミリオンとなるのだが、このアルバムがなければ、「B'z The Best “Pleasure”」(金盤)や「B'z The Best “Treasure”」(銀盤)、「B'z The “Mixture”」といったベストアルバムの類がリリースされることはなかった可能性も高い。これは松本・稲葉ともにベスト盤の発売には否定的であったためである。
 したがって、ファンにとってはこの非公認ベストが悪かったとは一概には言えない面があるのも事実である。


発売レーベル問題

 このアルバムの最大の問題点は、何より”B'zの本人達が公認していないアルバム”であるという点である。なぜ本人らの許可を得ずにリリースが可能なのだろうか。それには、”代表原盤権”という概念が絡んでくる。
 原盤権と呼ばれる著作権の一部は、複数社で共同所持されることが珍しくない。この場合、代表として1社だけに、「代表原盤権」なるものをもたせることになる。代表原盤権をもつレコード会社は、その他の代表でない原盤権をもつ者に無許可で音源を提供(譲渡)することが可能なのである。

 「Flash Back -B'z Early Special Titles-」の場合、以下の表のような関係性になっている。

作品 年月日 レコード会社 レーベル 代表原盤権
3rdシングル
「LADY-GO-ROUND」まで
~90年2月 BMGビクター air RECORDS BMGビクター
3rdアルバム
「BREAK THROUGH」まで
4,5thシングル
「BE THERE」
「太陽のKomachi Angel」
90年5月~90年6月 BMGビクター air RECORDS ビーイング
2ndミニアルバム「WICKED BEAT」
6thシングル
「Easy Come, Easy Go!」
から
10thシングル
「BLOWIN'」まで
90年10月~92年8月 BMGビクター ZEZ
(ゼゼ)
ビーイング
4thアルバム
「RISKY」
から
5thアルバム
「IN THE LIFE」まで

 よって、ちょうど非公認ベスト「FLASH BACK」に含まれた時期の楽曲だけの代表原盤権がBMGビクター側にあり、同じ「air RECORDS」からリリースされているものでも、90年5月以降の発売のものは代表原盤権がビーイング側に属していることが分かる。

 公認ベストの「Pleasure」に「BAD COMMUNICATION」が原曲のまま収録されていないのは、BMGビクター側の許可を要するためと考えられる。そのため、ビーイング側が代表原盤権を持っている「WICKED BEAT」の「Bad Communication E.Style」のショートバージョンを収録することになった。

 ビーイングとB'zのメンバーに何の了承もなしにBMGビクターが本作をリリースしたことに対し、ビーイングは、「ZARD BLEND~SUN&STONE~」を急遽用意し、リリース日をぶつけることで抗議した。ビーイングの抗議は成功し、非公認ベストの週間1位を見事阻止することができた。

「ZARD BLEND~SUN&STONE~」に関する記事はこちら↓ 3. 妄想アルバム ZARD BLEND ~SUN&STONE~

 一時は険悪な関係となったビーイングとBMGであったが、本作のリリースから2年以上経った2000/2/23に共同で「B'z The "Mixture"」をリリースしたことで和解したとされている。このアルバムでは、ビーイングが原盤権を有し、発売元はBMGジャパン内のBERGレーベル(DEENの所属していたレーベル)となっている。 単なるベスト盤ではなく、初期の曲を今(2000年時点)のB'zのサウンドでというコンセプトがあったことから、金盤・銀盤に続く銅盤ではなく、「パール盤」という愛称がつけられた。

「Mixture」収録曲
曲順 曲名 タイプ シングル/アルバム名 リリース日
1 だからその手を離して リアレンジ
リレコード
「だからその手を離して」 88/9/21
2 YOU&I リミックス 「ねがい」2nd beat 95/5/31
3 OH! GIRL リアレンジ
リレコード
「OFF THE ROCK」 89/5/21
4 NEVER LET YOU GO リアレンジ
リレコード
「OFF THE ROCK」 89/5/21
5 JOY リミックス 「愛のままにわがままに
僕は君だけを傷つけない」
2nd beat
93/3/17
6 今では…今なら…今も… リアレンジ
リレコード
「BREAK THROUGH」 90/2/21
7 孤独のRunaway リアレンジ
リレコード
「MARS」 91/5/29
8 MOVE 原曲収録 「ミエナイチカラ/MOVE」 96/3/6
9 東京 リミックス 「lov me, I love you」 2nd beat 95/7/7
10 hole in my heart リミックス 「MOTEL」 2nd beat 94/11/21
11 KARA・KARA リミックス 「裸足の女神」 2nd beat 93/6/2
12 FUSHIDARA 100% 原曲収録 「LOVE PHANTOM」 2nd beat 95/10/11
13 ビリビリ リミックス 「Liar! LIar!」 2nd beat 97/10/8
14 Hi 原曲収録 「さまよえる蒼い弾丸」 2nd beat 98/4/8
15 The Wild Wind 原曲収録 「HOME」 2nd beat 98/7/8
16 あなたならかまわない 未発表曲

 一番右の列を古い順にソートしてみると分かりやすいが、 となっている。B+U+M(明石昌夫)時代の曲が全てリミックスまたはリアレンジ・リレコードの対象となっている点も特筆すべき点だろう。やはり明石昌夫のシンセの使い方には時代性の強いものがあり、できるだけ生音の普通のバンドサウンドにしたかったものと思われる。 また、目を引くのが、「Liar! LIar!」の2nd beat「ビリビリ」は97年発売にも関わらず、リミックスされている点である。これだけが例外となっている。

 このように、「Flash Back -B'z Early Special Titles-」の発売に端を発する一連の問題は、翌年の「B'z The Best “Pleasure”」(金盤)、「B'z The Best “Treasure”」(銀盤)や3年後の「B'z The “Mixture”」(パール盤)のリリースにまで尾を引いていたのである。


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