名曲・名CMの宝庫! ポカリスエット CM曲 90年代ビーイング系

 90年代のビーイング系と言えばポカリスエット。それくらいポカリスエットのCMソングはビーイング系の代名詞的存在である。


ポカリスエットのCMの歴史

 ポカリスエットとは皆さんご存知の通り、コカ・コーラ社のアクエリアスと並ぶ2大スポーツドリンクであり、大塚製薬の看板商品の1つでもある。

 ポカリスエットは1980年に発売された。1986年からCMにポカリガールを採用し、今では若手女優の登竜門となっている。ちなみに初代ポカリガールはまだ歌手としてデビューする前の森高千里であった。

90年代の歴代ポカリガール
ポカリガール 出演期間
2代目 宮沢りえ 1988~1991
3代目 一色紗英 1992~1994
4代目 中山エミリ 1995~1996
5代目 後藤理沙 1998~1999

 21世紀に入ってからも、綾瀬はるかや川口春奈などの大物女優を輩出している。

 80年代からCMソングやCMガールを積極的に採用し、宣伝効果の増大を狙っていた大塚製薬であったが、90年代に入りビーイング系とタイアップすることで、絶大な効果を得られたことだろう。


ビーイング系とポカリスエット

 ビーイングはCMソングやアニメ主題歌などを独占的にタイアップする手法をよく用いていたが、ポカリスエットのCMはまさにその手法の典型例と言える。一連のポカリスエットCMは、Mr.Music(CM音楽制作会社)の吉江一男案件であると思われる。

 ビーイング系アーティストがポカリスエットのCMソングを担当したのは1991年~1996年及び1998年の実に計7年にも及ぶ。

ビーイング系の歴代ポカリスエットCMソング
アーティスト 楽曲 作詞者 作曲者 編曲者 売上(万枚) 最高順位
91 川島だりあ Shiny Day 川島だりあ 西田昌史 西田昌史 1.1 65
92 織田哲郎 いつまでも変わらぬ愛を 織田哲郎 織田哲郎 織田哲郎 92.9 1
93 ZARD 揺れる想い 坂井泉水 織田哲郎 明石昌夫 139.6 1
94 DEEN 瞳そらさないで 坂井泉水 織田哲郎 葉山たけし 103.8 1
95 FIELD OF VIEW 突然 坂井泉水 織田哲郎 葉山たけし 122.4 2
96 ZARD 心を開いて 坂井泉水 織田哲郎 池田大介 74.7 1
98 B'z さまよえる蒼い弾丸 稲葉浩志 松本孝弘 稲葉浩志・松本孝弘 69.2 1
 ※画面幅が狭い場合、左右にスクロールできます。
 ※西田昌史は西田魔阿思惟名義でクレジットされている。

 目を見張るべきなのは、92年から96年まで5年連続で織田哲郎が作曲、93年から96年まで4年連続で坂井泉水が作詞を務めていることである。さらに、93年から95年までは3年連続でミリオンを達成。 まさにビーイングのタイアップ戦略の大成功例と言えよう。


期待の新人をいきなり投入

 ポカリスエットとビーイング系のタイアップ初年度となった1991年は、CBSソニーから移籍&改名した川島だりあを起用。
 TUBEやB'zではなく、移籍&改名(川嶋みき→川島だりあ)、さらにはアイドルからロックシンガーへの転向と知名度ゼロの状態の彼女に、大手企業のCMを持ってきたあたり、ビーイングとしても川島だりあにはかなり期待を寄せていたことが伺える。 この頃、既に川島だりあも作家として活動していたのだから、どうせなら川島だりあ自身が作詞作曲を手掛けた曲で起用すれば良かったのに…と思うのは、筆者だけでだろうか。


シンガーとしての織田哲郎の本領発揮

 前年の「Shiny Day」は最高位64位、売上1.1万枚とタイアップとしては失敗に終わってしまったが、1992年からビーイングとポカリスエットのタッグは黄金期を迎えることになる。
 とことん織田哲郎を重用する長戸大幸は、切り札として、ソロシンガーとしてはあまり売れていなかった織田哲郎を起用。結果的には、これが見事功を奏し、織田哲郎自身初の週間チャート首位を獲得。売上も90万枚を超え、年間15位の大ヒットとなった。

 92年のCMには、「あいしてるの国」編・「ネーチャーの国」編(上の動画)・「したいほーだいの国」編(真ん中の動画)・「のんきの国」編(下の動画)の4パターンがあり、どれも織田哲郎の曲が前面に出た構成となっている。CMが始まった瞬間に聴く者の耳を捉えるキャッチ―さと力強さがあり、さすが織田哲郎と思わされる。
 特に「のんきの国」編では一色紗英も一緒に歌っており、さらに歌に注目が集まる構成になっている。


ZARDのイメージを決めた名曲

 92年の大成功を受け、1993年も作曲は織田哲郎が担当。この年は「負けないで」で大ブレイクを果たしたZARDを起用した。編曲は明石昌夫と、作詞、作曲、編曲、アーティスト共に最強の布陣を敷いた。これでヒットしないわけがなく、年間9位にランクインする139.6万枚の大ヒットとなった。 ポカリスエットのCMソングの中でも最大の売上を記録している。
 坂井泉水の硬質なガラスっぽい声と、織田哲郎のインパクトのあるメロディー明石昌夫によるハードなサウンドとZARDにとって王道の一曲で、ZARDのパブリックイメージを決定づけたといっても過言ではないだろう。

 CMには2パターンあり、「あいしてるの国」編と「アツアツの国」編がある。どちらも青春感に溢れており、織田哲郎も「あの頃のポカリスエットのCMは映像が素敵でしたね」と回顧している。


極まる爽やか路線

 続く1994年も当たり前のように織田哲郎の作曲、坂井泉水が作詞を手掛けたが、前年と違い葉山たけしが編曲を手掛けた。
 曲はDEENの「瞳そらさないで」。103.8万枚を売り上げ、2年連続でミリオンを突破するという快挙を成し遂げた。また、DEENにとって初の週間チャート1位獲得作品となった。
 葉山たけしをアレンジに起用したこともあり、前年よりさらに爽やかさを極めた楽曲となった。また、この年が一色紗英にとってポカリガール最終年となった。

 CMは4パターンあるが、そのうち2パターンはボーカル有り、残りはボーカルなしとなっている。CMのパターン数やボーカルをどれくらい前面に押し出すかは、1年ごとに変更されており、マンネリ化しないように工夫されている。


再び新人を投入

 1995年はなんと!前年と全く同じ布陣で楽曲制作に当たっている。それほど、長戸氏と吉江氏の信頼を勝ち得ていたということであろう。
 1つだけ変わったことと言えば、新人の FEILD OF VIEW を起用したことである。2ndシングルでいきなり前年まで成功が続いており、プレッシャーのかかるポカリスエットのCMに大抜擢された。 彼らの1stシングルの「君がいたから」も坂井・織田・葉山の黄金トリオで制作しており、彼らの重用ぶりが伺える。
 織田哲郎も「この頃、葉山君がアレンジャーとして一番脂ののった時期でねぇ」と語っているだけあって、爽やかなロックとして、とてもインパクトと聴きごたえのある曲に仕上がている。

 91年の時とは違い、新人を投入してもしっかりと大ヒットを記録。売上は「揺れる想い」に次ぐ122.4万枚に達した。しかし、ドリカムの「LOVE LOVE LOVE」に阻まれ、最高位は2位にとどまったため、1992年以降の黄金期のポカリスエットCMソング(ビーイング系に限る)としては唯一1位を逃している。

 上の方のダチョウに乗っている映像が「2nd challenge」、下の方の空中ブランコに取り組んでいる動画が「3rd challenge」と銘打ってあり、ポカリスエットを片手に何かに挑戦するのがテーマだったようである。
 浅岡雄也の突き抜けるような爽やかな声が非常に印象的

 また、この年は、「突然」のほかに非ビーイング系のLetit goというグループの「200倍の夢」もCMソングとして使われた。


3年ぶりのZARD

 1996年は3年ぶりにZARDが起用された。前年とは異なり再びCMソングは1曲だけに戻った。
 曲は「心を開いて」初めて池田大介が編曲を手掛けることになった。池田大介(単独名義)にとって「Secret Night ~It's My Treat~」に次いで、2作目のチャート首位獲得作品であると思われる。4年連続のミリオンに期待がかかったが、74.7万枚で残念ながらミリオンとはならなかったためか、織田哲郎と坂井泉水にとって連続起用の最終年となった。

 最初の1つが15秒バージョン、上から2つ目と3つ目が30秒バージョン、最後の1つだけが60秒バージョンである。30秒バージョンは「でも不思議なんだけど~♪」で始まるのに対し、15秒バージョンでは「このままずっと忘れたくない♪」とサビから始まる。

 前年までに比べるとメロディのインパクトが弱く、CM向きではないように思われるのだが、坂井泉水の内省的な歌詞と青春を描いた映像、そして池田大介の繊細なアレンジが相まって非常に素晴らしいものに仕上がっている。織田哲郎本人も「素朴なメロディ」と評しているこの曲が、完成度の高い上質なポップスとして、CMソングに抜擢された意義は非常に大きい


98年にして初のB'z

 1997年はポカリガールの出演もなく、ビーイング系の起用もなく終わった。しかし、明くる1998年は2年ぶりにビーイング系が起用されたのだが、なんと!B'zが起用されたのである。
 曲は「さまよえる蒼い弾丸」。今までは織田哲郎の曲ばかりが起用されてきたが、98年時点で織田哲郎は既にビーイングを脱退していた。そのためにB'zに話が回ってきたのか、それとも、最初からMr.MusicサイドがB'zを希望したのかは分からない。(おそらく後者)

 織田哲郎が曲を手掛けたCMとは趣が異なり、出演者はポカリガールではなく男性で、海や青春といった要素がない。これはこれで、B'zのカッコよさがとてもマッチしていて素晴らしいCMに仕上がっている。

 91年のブレイク以降の90年代のB'zのシングルでは最も売上が少なく、69.2万枚にとどまったが、これは翌月発売の「B'z The Best "Pleasure"」(通称金盤)に収録されたためと思われる。ライブでも多く披露され、2021年にはMr.Childrenの桜井と共に歌うなど人気曲の1つである。


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